【ドラマ感想】「カルテット」第1話2017年1月17日放送分(松たか子・満島ひかり・松田龍平・高橋一生・坂本裕二脚本他)【あらすじ・ネタバレあり】


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その他のドラマの感想はこちら→連続ドラマ感想一覧

■ドラマ感想
 やばい。期待通り。いや、期待の上を超えてきた。悔しくもある。初回から坂本裕二らしさ爆発のストーリーだった。それぞれの登場人物がどこか、不器用で、どこか心に重たいものを抱えていて、なぜか寄り添って、反発しあい、傷つけ合い、慰め合い、必死で前を向いていく。そんなドラマ。初回からそんなドラマ。
 まず、最初の山場は松たか子が余命9か月と嘘をついて演奏を続けるピアニストの真実を演奏を行っているレストランのオーナーにばらし、自分たちの仕事を確保するシーン。松たか子がしたことは、このピアニストは嘘をついていますと真実を告げただけ。そしてこの行為をどうとらえるかでまず、主役の四人がぶつかり合う。たしかに松たか子は真実を告げただけ、しかし、これを告げ口と受け取り、その空いた枠で自分たちが演奏することに、いささかの心苦しさを松を含め4人とも感じている。それを一番、表に出してしまったのが松田龍平。やはり、嘘をついていたとしても、そうまでして必死に演奏することにしがみついていた人を追い出すことはかわいそうだと。このピアニストと主役4人は直前に会っていて、家にまで行き酒を共にしている。その生活ぶりを見たうえで、松田龍平は情が移ってしまい、可愛そうだという。そこまでして自分たちが仕事を取ることは望まないと。だが、それは将来の自分を見ているようでつらいからこその同情ではないのかと松たか子に指摘され、一瞬憤るも、思い当たる節は確かにあり、黙ってしまう龍平。その間に、高橋一生も思いのたけを松にぶつける。柱に画びょうでチラシを張り付けた松田龍平の行為を例に挙げ、攻撃する。松も、龍平も柱に平気で画びょうを打つことの出来る人間だと。あのピアニストの家には画びょうはなかった。ポスターはセロハンテープで止められていたと。そういった心の奥は臆病ででも、嘘をついてでもピアニストとして生きている人間を追い出すのは心苦しいのだと。つまり高橋一生は高橋一生でやはり、あのピアニストに自分を重ね、不遇の立場においやってしまったことに後ろ髪をひかれている心境だと。そして唯一の松の行動に一定の理解を示すのが満島ひかり。しかし、松の、「夢を追い続けるのか、趣味として生きていくのか、音楽家として生きていく夢を追い続けるのであれば、四の五の言ってないで、どんな方法でもチャンスを奪い取ってでも生きていかないと夢を追い続けることなんてできない。この年齢になってでも夢を追い続けるということはそういうことだ」という発言に満島ひかりは引っかかった。そんなこと言ったって、あなたは結婚していて、帰る場所があるでしょ?と。そこで、松は夫が1年も失踪していることを打ち明けたのだ。
 この一連のやり取りが本当に秀逸。まだ出会って間もない、30代の大人の男女が相手の顔色をうかがいながらも、お互いの心の内を表に出し、主張する。配慮はありつつも遠慮はない。ピリピリとした空気感と共に、大人としての振る舞いは決して忘れない品の良さ。基本的に楽器をプロを目指せるレベルにまで上達するには基本的に裕福な家庭で育った可能性が高い。基本的に品は良いのだ。そういったことまですべてが秀逸に表現されたシーンだった。
 坂本裕二の脚本にはいくつか印象的なセリフがある。例えば音楽は穴の開いた人間にしか奏でられないとか、どうして、晴れをいい天気って言うんでしょうね、とか(正確にセリフを抜き出してはない、記憶の中のニュアンス。)。音楽に限らず、芸術なんてものはそういったもの。心に何か欠陥がないと、何かを表現しようなんて思わないんじゃないかな。まあ晴れをいい天気というのはきっと農作物が良く育つからでしょう。ただ、私も曇りが好きなので晴れがいい天気とは思わないし、言わない。
 そして何より、衝撃のラストが。そもそも、この4人が出会ったのはカラオケボックスでたまたま居合わせたということだったのだが、松以外は皆松がカラオケボックスにいることを知ったうえで、あえて、偶然を装って近づいたのだ。そのうちの一人、満島ひかりはなんと、松の失踪中の旦那の母親からの依頼で、近づいていたという事実。怖い。残りの二人はこの母親からの依頼だとは思えないので(満島から報告を受けていたので、他に2人も雇う必要性があまりない)、何か別の理由で松に近づいたのではないかと。それは今後明らかになるし、話の格になっていくのだと思う。今回はただの人間模様ではなく、謎解きというか、ミステリーの要素も加わって、坂本裕二の真骨頂なのかもしれない。そして、その松が、この出会いを運命だと思い、救われてしまっている一面があるということ。この嘘が明らかになった時にの松の悲しみを考えると今から胸が張り裂けそうである。期待通り、今季今のところダントツ一位の作品だ。

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 そうそう、ついでに言うとエンディングがカッコよすぎてやばい。エンディングで演者が踊るということがヒットの要因にもなった逃げ恥からそのエッセンスを受け継ぎつつも全く別のベクトルでパワーアップさせていて秀逸。素晴らしい。確かに松たか子と、満島ひかりがいたら歌ってもらいたくなるよ。そして作詞作曲は椎名林檎と来たもんだ。もう素晴らしくないわけがない!!!超絶ダサい2番煎じに陥ったスーパーサラリーマン佐江内のスタッフはこれを見て学ぶべきだと思うよ。


■あらすじ(公式hpより)

 ある日、“偶然”出会った男女4人。
夢が叶わないまま、人生のピークにたどり着くことなく緩やかな下り坂の前で立ち止まっている者たちだ。そんな4人がカルテットを組み、軽井沢で共同生活を送ることになる。しかし、その“偶然”には、大きな秘密が隠されていた……。

 巻真紀(松たか子)は別府司(松田龍平)の運転で軽井沢の別荘へとやって来た。待っていたのは世吹すずめ(満島ひかり)と家森諭高(高橋一生)。東京のカラオケボックスで出会った4人は皆演奏者で、弦楽四重奏をやることになったのだ。ライブレストランで演奏しようという話になるが、その店では“余命9ヶ月”のピアニスト・ベンジャミン瀧田(イッセー尾形)がレギュラー演奏していた。そこで真紀は、突拍子もないことを言い出す。
翌週の感想はこちら→カルテット第2話感想

 
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